ログイングチュグチュと響く水音も、いまはエマの快感を押し上げるだけだ。 (ぁぁ……気持ちいいっ……指、もっと奥に……っ) ルシアンの前で、はしたなく嬌声を上げ、腰を振る。 乱れるエマを前に、ルシアンはその昂ぶりを口に含んだ。 「ひゃぁん! ぁんッ、ぃやぁぁっ、んぁぁっ!」 ルシアンの熱い口内に包まれ、舌で舐められると、もう我慢できない。 「ァァッ、やめっ、……気持ちっ……ぁ、ぃ、イク……っ!」 昂ぶりと蕾を同時に責められ、すぐにイってしまった。 それなのに、絶頂の余韻に浸る間もなく、ルシアンは指を増やした。 「ひゃぁぁっ! ぁっ、やぁぁんっ!」 「っ……我慢せず、イっていいのですよ」 「ぁぁんっ……ァァッ、はぁっ……ひゃぁっ!」 連続でイかされ、ビクビクと躰が跳ねる。 さらには、達したばかりの昂ぶりにねっとりと舌を這わせ、また絶頂へ追い上げる。 「ひゃぁぁんっ! あぁぁっ!」 もう脚を支えることもできず、エマはルシアンの髪を掴んで、かぶりを振った。 「やぁぁんっ、る、ルシアン、さまぁっ」 「ん……」 「はぁぁんっ」 (だめぇっ……気持ちよすぎるよぉっ!) エマは涙をこぼしながら、快楽に啼く。 そうして昂ぶりと蕾をたっぷり愛撫されたエマは、すっかり発情していた。 腰がズクズクと疼き、躰がひどく熱い。額から汗を流し、首筋にも、お腹にも、全身に汗の粒が光る。 昂ぶりからは蜜があふれ、弄られた蕾はゆるみ、無意識にフェロモンを放っている。 (ぁぁ……もっと、イきたいっ) 「ぁ、熱いっ……んっ」 心も躰も、快楽に溺れてしまいそうだ。 早く満たされたいと、それだけで頭がいっぱいになる。 「エマ、可愛いですね」 ルシアンが、エマの頬を撫でる。 エマはその仕草にさえ、うっとりと目を細めて、ルシアンに甘えた。 「る、ルシアンさま……もっと…
「エマ……ベッドへ」 「はい」 ルシアンに促されて、ベッドに座る。 その隣にルシアンが腰掛け、エマの腰を抱き寄せた。 「ぁっ、……ルシアン様?」 「エマ」 宝石のような赤い瞳が、煌めいていた。 銀の髪も、灯りにきらきらと浮かび上がる。 (あぁ……なんて美しいんだろう) 端麗な顔立ちに、甘やかな眼差し。 初めて会ったときから、惹かれてやまなかったアルファ。 (この方が、本当に僕のものになるの?) エマは夢見心地でルシアンを見つめる。 ずっと願っていた幸せは、突然すぎて、まだ信じられない気持ちだ。 そんなエマの想いをくみ取るように、ルシアンが甘い声で囁く。 「私の、可愛いエマ」 そして、また唇が重なった。 今度はエマの唇を開くように、舌が入ってくる。 「んっ……ぁ、ぁぁっ」 ルシアンの舌が、エマの舌先に触れる。 ビクッと震えると、優しく舐められた。 「あぁっ、ァ、……ぁんっ」 (こんなキス、初めて……) 唇に触れるだけでなく、舌まで絡ませるようなキスは、初めてだった。 ルシアンの舌が巧みに動いて、エマの口を貪っていく。 「んぅ……ぁ、ぁぁっ」 口の中を味わうように、舌の裏まで舐められ、上顎をくすぐられる。 歯茎をなぞられ、角度を変えて、奥まで探ろうとしてきた。 「はぁんっ……んぁっ、ァァ……んんぅっ」 口端から唾液があふれて落ちる。 クチュクチュと音が響き、ルシアンの息づかいを直に感じて、胸がドキドキした。 (あぁ……これが、恋人のキスなの?) 触れるだけのキスと違って、なんて激しくて甘いのだろう。 だけど、懐かしさも感じていた。 いつだったか、ルシアンに愛される夢を見たことがある。 (あの夢が、現実になったんだ) そう思うと嬉しくて、胸が高鳴った。
「本当にっ……自由に、なったのですね」 声が震え、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。 こんな未来が訪れるなんて、夢にも思わなかった。 嬉しくて、胸がいっぱいで、涙が止まらない。 差し出されたルシアンのハンカチを受け取り、エマは何度も瞬きをしながら涙を拭った。 「エマ。貴方に、この場で伝えたいことがあります」 「……はい」 顔を上げると、ルシアンが一歩前に出て、静かにエマの前へ跪いた。 「ぇ……ルシアン様?」 戸惑うエマの左手を取り、その甲へ、口づけが落とされる。 熱が一気に頬へ集まり、エマの心臓は早鐘を打った。 見上げてくる赤い瞳は、いつもよりもずっと真剣で、揺るぎない。 「エマ……初めてお会いした日から、貴方に惹かれていました」 ルシアンの澄んだ声が、甘く耳に響いた。 「可憐な花のように美しい貴方は、とても魅力的で、もっと近づきたいと思ったのです」 「ルシアン様……っ」 「貴方には婚約者がいたため、想いを告げることも出来ず……胸の内に秘めるしかありませんでした」 「っ……」 「ですが、思いがけず機会がめぐり……私の功績が認められ、皇太子殿下のお許しを頂くことができたのです」 とうとうと語られる言葉は、ルシアンの片思いを告白するものだ。 それは、王太子や皇太子の前で語るための言葉だった。 ルシアンがエマを欲する余り、手柄を立てたのだという筋書きで、二人の間には、何もなかったのだと示すためのもの。 けれどエマは、ルシアンの好意を知っていた。 初めのうちは、本気だと信じられなかったけど。 (でも、何度も、ルシアン様に愛でられて……) エマは、愛される喜びを知った。 それでも、最後の一線を越えたことはない。 エマはルシアンの意図を察して、微笑んだ。 「エマ。貴方を愛しています。これから先も、何があろうと、貴方を守り続けると誓います」 ルシアン
後見権。それは、聖樹を管理し、処遇を決定する権限だ。 言い換えれば、聖樹の所有権である。 (そ、そんな……っ) エマは体を震わせた。 ランダリエ王家が持つエマの所有権を、皇太子に渡すと言うのだ。 (やだっ……せっかく、王子から自由になれたのにっ!) 顔を強ばらせるエマに、王太子が柔らかな眼差しを向ける。 「心配せずともよい。エマヌエーレ」 「ぇ……?」 問い返すよりも早く、皇太子がクロエから受け取った書面を読み上げた。 「聖樹エマヌエーレの後見権を、皇太子ティエリーが譲り受ける。以後、エマヌエーレの処遇と保護は、すべて新たな後見人の責任において行うものとする」 すでに署名と印章が入った書類が、中央の台へと置かれる。 エマは、反射的に一歩後ずさった。 すると、そっと後ろから抱きしめられる。 「大丈夫です、エマ」 「ルシアン様……?」 振り返ると、赤い瞳がまっすぐにこちらを見つめていた。 迷いのない、静かな眼差しだった。 その手の温かさに、こわばっていた体から、少しずつ力が抜けていく。 (……大丈夫、なんだよね?) 彼が、エマを傷つけるはずがない。 エマは唇を噛みしめ、成り行きを見守ることにした。 「さて」 皇太子が楽しげに声を弾ませる。 「此度の王家審問において、最も力を尽くした我が部下を、ここで称えるとしよう」 その視線が、まっすぐにルシアンへ向けられた。 「ルシアン・デイモンド伯」 「はい、ティエリー殿下」 「褒美を与える。聖樹エマヌエーレを、貴殿に下賜(かし)する」 「……えっ?」 エマは息を呑み、思わずルシアンを見上げた。 (僕が……ルシアン様のものに?) ずっと、願っていたことだった。 けれど、あまりにも突然で、喜びよりも驚きで狼狽える。 「エマ」 ルシアンが
「っ……大聖花様も、どうかお健やかにお過ごしください。幼き頃より、今日まで見守ってくださったこと、心より感謝いたします……女神イーリスのご加護がありますように」 エマの眦から、涙がぽろっとこぼれ落ちる。 (大好きだった。いつも、優しくて、温かくて) イーリス大神殿で過ごした日々のことが、頭を駆け巡る。 聖樹を平等に慈しみ、愛してくださった方だ。幼いエマが神殿に馴染むまで、優しく寄り添ってくれた。十年間、ずっと温かく見守ってくださった。 その恩は、一生忘れない。 大聖花は、瞳を潤ませながら、深く一礼する。 そして、控えていた神官とともに、静かに退出した。 気がつくと、その場に残っていたのは、四人だけになっていた。 エマの他には、ナタリナ、ルシアン、王太子だ。 「エマヌエーレ。こちらへ」 「はい」 王太子に呼ばれ、エマは中央の台へと進む。 背後にはナタリナが控え、隣にはルシアンが並んでくれていた。その存在が、心強い。 と、そのときだった。 「やっと終わったな。待ちくたびれたぞ」 聞き覚えのある声に、エマはハッとして振り返る。 そこに立っていたのは、帝国の皇太子、ティエリーだった。 紫色を基調とした簡素なジャケットに、藍色のマント。そこには皇族を象徴する獅子の紋章があしらわれている。 「こ、皇太子殿下っ!?」 エマは慌てて、両手を胸の前で重ねて、軽く膝を折った。ナタリナもそれに倣う。 動揺しながらも、なんとか挨拶をした。 「帝国の若き太陽、皇太子殿下にご挨拶いたします」 「うむ。そうかしこまらずとも良い」 以前に天耀宮で会ったときと変わらない、気安い口調だった。 (どうして、皇太子殿下がここに?) 戸惑うエマの耳元で、ルシアンが小声で囁く。 「ティエリー様は、二階席で傍聴されていました」 「えっ?」 思
「……エマ。泣かないでください」 不意に、両手を優しく包まれる。 顔を上げると、ルシアンの温かい瞳が、エマを見つめていた。 ルシアンはエマの前に跪き、こぼれる涙を指でぬぐう。 「ルシアン、さま?」 「エマ。貴方のせいではありません。辛い巡り合わせであったことは事実ですが、貴方は今も、清らかで尊い聖樹です」 「……っ」 「貴方が深く傷ついていることは、知っています。その傷を、私が癒やして差し上げたいのです」 「癒やす……?」 「ええ。どのような冒涜も、貴方自身を穢すことはできない。貴方はどこにいても、光り輝いている。私の、愛しい女神」 「っ、ルシアン様っ」 「さあ、どうか泣き止んで。まだ、大事な話が残っていますから」 濡れた頬を、ハンカチで拭ってくれる。 エマがコクリと頷くと、ルシアンが優しく微笑んだ。 「……エマヌエーレ様」 懐かしい声に、ハッと振り向く。 すぐ側に、大聖花が立っていた。 「大聖花様っ!?」 「退出の前に、王太子殿下にお許しを頂きました」 その言葉に周りを見渡すと、すでに国王夫妻の姿はなかった。ユリックも、書記官たちも、騎士も、すべて審問の場から退出している。 ルシアンは場所を譲り、大聖花がエマの正面に立った。 エマも慌てて椅子から立ち上がり、深く頭を下げた。 「大聖花様……ご無沙汰しております」 「ええ。貴方が神殿を離れてから、まだ二年と経っておりませんね」 大聖花は穏やかに微笑み、エマを見つめる。 「つい先頃、蕾をつけ、これから花開こうという折に……その身に、かように過酷な試練が課せられるとは」 いたわるように、大聖花の手がエマの頭におかれる。神殿に来たばかりの頃、心細くて泣いていたエマを、何度もそうして慰めてくれた手だった。 (大聖花様っ……) 大聖花は優しく頭を撫でながら、静かに語る。 「これもまた、女神イーリスの御
エマがその箱を受け取ると、ルシアンは代わりに緑のリボンの小箱を手に取った。 そして、柔らかな声で囁く。 「貴方が選んでくれたこの青い鷲のブローチは、私の宝物です」 「えっ?」 「私のブローチを、貴方に預かっていてほしい」 「僕が? ルシアン様の宝物を?」 「ええ」 ルシアンは、手の中の小箱をそっと掲げた。 「貴方を迎えに行く日が来たら……その時、これを貴方に返します」 「ぁっ……!」 エ
(ナタリナ! ルシアン様に咎められたらどうするの!?) エマはハラハラしたが、ナタリナも従者も出ていくと、扉が閉まり、二人きりになった。 急にシンと静まり返って、エマはドキッとした。 ほんの少し前まで、楽しい会話と食器の触れ合う音で満たされていたのに、今は息をするのもためらうほど、静かだった。 正面に座っていたルシアンが、椅子から立ち上がる。 その仕草ひとつに、食事のときとは違う、柔らかい気配があった。 ルシアンは、ゆっく
取り巻き達もせせら笑っていたが、あまりに下品すぎて、気分が悪くなってきた。 「それが、お前の女か? 珍しい髪の色だな。顔を見せてみろ」 「ッ……」 急に声を掛けられて、エマは肩を震わせた。 ルシアンの腕にぎゅっと抱きつき、必死で扇子を握る。 もし無理やり取り上げられたら……。 顔を見られてしまったら、すぐ正体に気付かれてしまう。 「大丈夫ですよ、レディー。どうかご安心ください」 ルシアンが優しく囁き、エ
「これが、ランジェルの下着……」 手に取ってみると、もらった肌着よりも、なめらかで触り心地がいい。 両脚を通して履くようになっており、エマはドキドキしながらその下着を身につけた。 「んっ……ちょっと、きつい」 太ももまでは良かったが、秘部を覆うように履くと、どうしても半身を締めつける。 今は勃ってないけど、ちょっとでも感じたらひどく窮屈になりそうだ。女性物だから当たり前なのだが、エマは下着を着けるのが初めてで、これが普通なのかと思ってしまう。